アロマとクラシック音楽。ふたつを学ぶ筆者の目線から、クラシック音楽の新しい楽しみ方を提案していく連載です。
前回はクレオパトラの愛したイランイランをご紹介しましたが、今回はクレオパトラと並んで世界3大美女のひとりである楊貴妃の愛した香り“白檀(びゃくだん)”に合わせた曲をご紹介いたします♡
絶世の美女であり、あらゆる男性を夢中にしたといわれる楊貴妃は、白檀の香りをこよなく愛し、白檀で作られたお家に住んでいたと伝えられています。そんな白檀の香りとは…?
オリエンタルな香り・白檀
白檀とは和名で、英名では “サンダルウッド” といい、インド原産の香木。心を鎮めて深い瞑想状態に入ることができる、スピリチュアルな香りです。多くの寺院でお線香・お香として焚かれています。インドから中国に仏教が伝来した際にこの香りも一緒に伝わってきたようです。そのため日本でも仏教儀式には白檀が使われるので、私たち日本人にとっても親しみのある香りと言えるでしょう♪
白檀を使うと周りの空気が浄化するので、瞑想・集中したいときやメンタル強化などに効果的です。また精神が非常に落ち着くのでリラックス効果があります。
そんなオリエンタルな白檀の香りと共にご紹介したいのは、楊貴妃の出身地でもある中国を舞台にしたオペラ《トゥーランドット》です!!
オペラ《トゥーランドット》
全3幕から成るプッチーニ最後のオペラ。プッチーニはこのオペラの作曲中に亡くなったため、途中からは彼が残したスケッチを基に弟子のアルファーノが補筆しています。
♪あらすじ♪
舞台は中国・北京。皇帝の娘トゥーランドット姫と他国の王子カラフの物語。氷のように冷たい心を持つトゥーランドット姫は求婚の条件として「3つの謎を解いた者を夫として迎えるが、その謎を解けなかった者は斬首の刑」という残酷な謎かけを出していました。
カラフはトゥーランドット姫の美しさに心惹かれ、謎かけに挑戦するといいます。見事に謎を解いてみせるのですが、トゥーランドットは動揺して結婚を拒みます。そんな姫君にカラフは「夜が明ける前に私の名前を明らかにすることができたら私の命を捧げましょう」と持ちかけます。そこで姫は市民に「今宵、あの男の名前が分かるまで北京の民は誰も寝てはならない」と命令を下すのでした。
さて…このあとカラフの愛は姫に届くのか、どちらがこの謎かけに勝つのか。ぜひオペラを見てご確認下さい♪
今回はオペラの中から、白檀の香りにぴったりなとっておきのアリアを2曲、ご紹介したいと思います。
💿「この宮殿の中で」in questa Reggia
トゥーランドット姫が登場してすぐに歌うアリアで、キャラクター紹介のような意味合いの曲です。「謎は3つ 死はひとつ!」と言って終わる冷酷な一曲ですが、悲しい過去を語り自らの使命を果たそうと心に誓う姫の姿には、女性の芯の強さが感じられます。集中力をぐっとあげる白檀の香りを合わせることで、トゥーランドット姫の威厳を引き立たせると共に姫の決意がより強く伝わってくるように思います。ぜひお試し下さい♬
💿「氷のような姫君も」Tu che di gel sei cinta
このオペラのもうひとりの重要な登場人物・リュー(カラフ王子の国の女奴隷)が第3幕で歌うアリア。リューはこのオペラのテーマである “愛” を擬人化したような人物で、彼女がこのオペラの印象を決めるといっていいほど、とても大切な存在です。この曲はそんなリューが、密かに慕っていたカラフ王子のために自ら命を絶つ場面で歌われます。
彼女はカラフの名前を知っているとしてトゥーランドット姫の命令で拷問を受けます。それでも決して名前を口にしないリューですが、最後には自ら命を絶ってその名を守り通すのです。
「氷のようなあなた様も愛の炎に負けて、あの方を愛するようになるでしょう。私は疲れて、この夜明け前に目を閉じます。あの方が再び勝てるように…そしてもう2度とあの方を見ないように…!」
そう言って近くにいた兵の短剣で自分の胸を突き刺します。見開き2ページのとても短いアリアですが、プッチーニらしい異国情緒溢れる響の中で語る彼女の言葉は胸に刺さり、オペラの中でも強く印象に残る一曲です。人を惑わす官能的な愛ではなく、全てを包み込む大きく深い愛情。そんな女性的な柔らかさ、また姫の冷たい心を溶かす深い愛情を表現するために、体温を感じる香りが合うのではないかと思い選びました。
女性の強さと愛
このオペラの中ではテノール扮するカラフが歌うアリア「誰も寝てはならぬ」が圧倒的に有名ですが、白檀は女性の心の強さと母性的な愛を感じる香りなので女性のアリアをご紹介しました。プッチーニやヴェルディなどの後期イタリアオペラにはこのような悲劇の女性ヒロインが多く登場します。これを機に、ぜひ女性ヒロインのキャラクターに注目して色々なオペラを聴いていただけたら嬉しいです。
アロマとクラシック音楽のこの企画、いつか実際のコンサートで実現したいと思っています。この曲にこのアロマの香りが合うのでは? というアイディアがございましたらぜひ編集部までお寄せください♡ 次回のアロマ×クラシック音楽もお楽しみに!
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