みなさん、こんにちは。寒い日々が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?
今回のちょい聴きは「新ウィーン楽派」に至るまでの音楽をお届けします。ウィーンはオーストリアの首都で、音楽の都とも呼ばれていますね。「新」と言うからには「旧」もあるのかしら…? と思いますが、実は普通の「ウィーン楽派」と言うと 18 世紀後半から 19 世紀初頭にかけてウィーンで活躍した作曲家たちのことを指します。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどのおなじみの作曲家が当てはまります。
印象主義から表現主義へ
まずは流れをつかむために、ドビュッシー作曲の「海」からちょい聴きしていきましょう。20 世紀初頭、印象主義という流派が現れます。これは大まかに言うと、雰囲気・気分・自然などのイメージを音で表す、という西洋音楽における考え方です。ドビュッシーの海は、まさに印象主義の代表曲なのです。
荒れ狂う海や、静かな海、海から受けた様々な印象を音楽で表していて、おしゃれで綺麗な曲だなあと思います。
この動きに反するかのように現れたのが表現主義です。外界から受けた印象(印象主義)ではなく、人間の持つ感情などの内面を表すことに焦点が移っていくのでした。例えば恐れ、不安、狂気…など、人間の持つ、普段は内側に秘めるような生々しい感情を表現するようになっていきます。
この、ドビュッシーから現代音楽に移り変わっていく流れを、こちらの記事でもご説明しておりますので、ぜひもう一度チェックしてみてくださいね。
▷参考記事:「現代音楽の原点から進化を、オーケストラの曲で体感しよう!」
生々しい感情を表すには?
たとえば、みなさんが音楽の授業を受けているとします。先生に「恐れ、不安、狂気などの生々しい感情を、音で表してください」なんて課題を出されたらどんなことをするでしょうか。普段聞きなれている、どうしてもきれいに聞こえてしまう和音や、統制がとれている音階を使って、生々しい感情を表現しようとしますか…?
ここで作曲家たちが選んだのは無調でした。書いて名の通り、調がない状態。調がない状態というと、まるで好き勝手に音を並べていいような気がしますが、そこは頭の良い作曲家のこと、好き勝手やっているようで実はルールを決めてあり、めちゃくちゃにならないようにコントロールしています。そのコントロールの仕方にいろんな名前がつけられていくのですが、それはまた次回以降で。
こうして、機能的な和声や調性から解放されていった「音楽」は、一体どのような作品になるでしょうか…? それではシェーンベルク作曲の『月に憑かれたピエロ』をお聞きください(動画開始後 56 秒あたりから演奏が始まります)。
なるほど、無調ってこんな響きになってくるのだな…と感じていただけましたでしょうか。7 人の小さなアンサンブルで、女の人が語りあげるように歌っています。この女声は実は男のピエロ役。ピエロが全編にわたって、愛・性・暴力や罪などさまざまな詩を語り上げています。ひとくちに「愛」といっても、いろんな愛がありますよね。純情な愛があれば、狂気がこもった愛も…どんな愛なのかは、歌い手の様子と、音楽でなんとなく想像がつくことと思います。
無調の音楽といったら、まるですべての秩序が崩壊しているような印象を受けるかもしれませんが、この『月に憑かれたピエロ』では古典的な形式が使われています。カノンやフーガ、ロンドなど、それこそ冒頭で名前が出てきた「普通のウィーン楽派」の時代からあるような形式が、こんな前衛的な曲で使われてるなんて、ちょっと驚きです。長めに聴いていただけるとわかりやすいのですが、一曲一曲が非常にコンパクトにまとまっていて、意外と聴きやすいんですよ。曲数はとっても多いんですけどね…笑
今回は無調に至るまでの流れをさらっとご紹介させていただきました。今回の文中で「無調の作曲家は好き勝手やっているようで実はルールを決めてあり、めちゃくちゃにならないようにコントロールしています」と書きましたが、次回はこのコントロールの仕方(技法)についてお届けしたいなと思います。
それではまた次回お会いしましょう♪
yucca
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