おはなし(英雄の最期とかつての栄光)
しかし、ナポレオンの再びの天下は長くは続きませんでした。1815年にはワーテルローの戦いが起こり、イギリス・オランダ軍を相手に激戦を繰り広げるものの、プロイセン軍が加勢したことでついに完全敗北することとなったのです。およそ100日間の栄光。人々はこれを「百日天下」と呼びました。
かつての英雄ナポレオンは南大西洋の孤島セントヘレナ島へ流され、52歳という若さで生涯に幕を閉じます。

ききどころ
激しい戦いの様子が演奏されたのち、一瞬の静寂が訪れ、ナポレオンの敗北と流刑を思わせるフランス国歌が静かな旋律で奏でられます。
世界史では、ナポレオンは失脚し、セントヘレナ島で孤独に生涯の幕を閉じます。しかしこの楽曲では、連戦連勝を重ねたフランス軍と、それを率いるナポレオンが人々の歓声を浴びながら凱旋しているかのようなクライマックスがやってきます。音楽の中でナポレオンの栄光は再び蘇り、「英雄の調」と呼ばれる、まさに彼にふさわしい力強い変ホ長調の音楽で幕を閉じるのです。
-おしまい-
オットー・W・シュワルツの音楽はドラマチックで物語性に富んでおり、巨大スクリーンにどこまでも広がる壮大な世界を思わせます。たとえば、日本で知られるきっかけとなった作品『ノストラダムス』はノストラダムスの大予言をテーマに書かれています。
そのほか『ドラゴン・ファイト』、『80日間世界一周』など多くの人気作品を書いており、ベストアルバムも発売されています。吹奏楽作品が多いですが、同じ曲をオーケストラで演奏したCDも出ており、吹奏楽とは違った響きを楽しむこともできますので、ぜひ手にとって聴いてみてください。
吹奏楽×世界史でお届けするこのコラム、次はどの時代へと向かうのでしょうか?
次回もどうぞお楽しみに。


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