みなさん初めまして! 邦楽演奏家の藤田和也です。
COSMUSICA(コスムジカ)はクラシック音楽特化メディアなのですが、「興味はあるけれどなかなか入り口が見つからない」という意味では邦楽もクラシックに通ずるところがあるということで、邦楽についてもご紹介していくこととなりました。
さて、先ほどから「邦楽」と言っておりますが、これはもちろんロック、メタルなどで使われる邦楽ではなく、古典芸能の方の邦楽です。
古典芸能って聞くと皆さんはどんな楽器を思い浮かべますか?
三味線、太鼓、笛、鼓などなど…
楽器の種類も様々ですが、ジャンルもまたたくさんあります。今回は皆さんが知っているようで知らない、邦楽のジャンルについてみていきたいと思います。
雅楽(ががく)
多くの方が、日本の音楽というと「雅楽をやられてるんですね」とおっしゃいます。しかし、雅楽は日本の音楽のジャンルのひとつであって、邦楽といったら雅楽ということではありません。
雅楽は元々、アジアの諸国からもたらされた音楽が融合したもので、約1000年前には大まかな形が完成しています。現在の形は、奈良時代にはできていたとも言われています。
宮廷の音楽として、皇室の行事などで今でも演奏されます。身近な例では、神前の結婚式で演奏されますね。
実は世界最古のオーケストラと言われているんですよ。
能楽(のうがく)
「能」と言われるとピンと来る方も多いと思います。「能楽」には、「能」と「狂言」の意味が含まれています。
能は観阿弥、世阿弥の親子によって確立されました。西暦1350年から1400年の初めくらい、ちょうど室町時代の出来事です。
明治維新までは「猿楽」と呼ばれ、維新後に能楽と呼ばれるようになりました。江戸時代には幕府の式楽(公式芸能)になり、武士の中でもたしなみとされてきました。
現在の演目のほとんどが昔と大きい変化もなく、形や衣装、セリフ、演出、台本、発音、発生までそのまま伝えられています。
歌舞伎・歌舞伎音楽
歌舞伎は現在でいう大衆演劇で、庶民の娯楽として親しまれていました。
歌舞伎・歌舞伎音楽は、江戸時代にあたる西暦1600年頃に、出雲阿国が創めたとされています。江戸の元禄時代(1600年後半頃)から発展し、文化・文政時代(1800年前半)には江戸文化の発展と共に歌舞伎も大きく発展していきます。
歌舞伎音楽は主に三味線音楽です。木遣りの労働歌といった様々な大衆芸能を吸収しながら、現在の形になりました。ここで三味線音楽についても少し解説いたします。
三味線音楽
沖縄の三線(さんしん)が本州に伝わって三味線になったといわれています。実は、三味線音楽にも沢山のジャンルがあります。現在多くのジャンルがある中で代表的なものを紹介したいと思います。
・常磐津
常磐津節という一種で、三味線は中棹三味線という太めの三味線を使います。物語を語る部分と唄の部分があります。
・清元
清元節という一種。艶っぽい風情があり、長唄の影響を受けて唄うような語りが人気を博しました。また特徴的な高音も江戸の人々に愛されたようです。
・長唄
主に江戸長唄というジャンルのことをいいます。細棹という三味線を使い、語るものとは違い、唄がメインとなっています。小唄、端唄や民謡などを取り入れて人気が出ました。
・地歌
上方(関西地方)を中心に流行したもので、中棹三味線を使います。三味線のジャンルの中でも初期の頃から存在し長い歴史を持っています。現在では筝曲と一緒に演奏されることが多いです。
・義太夫
義太夫節という音楽。人形浄瑠璃の伴奏として発展したものを歌舞伎が取り入れました。太棹という三味線を使い、太夫が物語を語るというスタイルです。
・その他
他にも、新内節や荻江節、河東節など様々な三味線音楽があります。
津軽三味線も三味線音楽ですが、歌舞伎とは関係なく独自に発展をしてきた音楽でして、音楽ジャンルでいうと「民謡」にあたります。
三味線ってこんなにも沢山の種類があるのです。ただ、三味線に詳しい方でなければ、なかなか聞いただけでジャンルを判別するのは難しいです。
民謡
古代から続く伝統的な歌唱です。基本的に楽器は入らないものでしたが、時代と共に発展し、最近では三味線や太鼓、笛などが入っていることもあります。
じょんがら節やこきりこ節など有名なものも多いですね。
囃子(はやし)
囃子とは、「はやしたてる」が語源で、太鼓や笛などで賑やかすことを指します。能楽囃子や歌舞伎囃子、祭り囃子、神楽囃子など日本の音楽には欠かせません。
最近よく耳にする和太鼓・組太鼓は「創作和太鼓」といって、ここ50年ほどの間に発展してきたものです。ダンス的要素や洋楽的アプローチなど様々なものを取り入れており、「伝統の楽器を使用した現代音楽」の一種です。
邦楽と一口に言ってもこんなに沢山のジャンルがあるんですね。また、さらにジャンルの中で細かく分かれるものも少なくありません。
邦楽について勉強してみたいと思った方が、いざ調べ始めるとこの種類の多さと煩雑さにびっくりされるようです。ですが、なにも初めから全てのジャンルを正確に理解しようとする必要はありません。
アンテナを立てて過ごしてみれば、みなさんの身近にもきっと何かしらの邦楽があると思います。まずはそれを調べてみるなどして、邦楽への理解を深めてみてください。
藤田 和也
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