目立ちたがり屋さんは不向き? 伴奏ピアニストに求められること


ピアニストという単語から、どのような姿をイメージしますか?

ほとんどの方が思い浮かべるのは、おそらくこういうイメージではないでしょうか。

大きな舞台の真ん中で、ひとりでピアノを演奏している人。もしくは、オーケストラの真ん中でピアノコンチェルトを弾いている人

これらのピアニストをソリストといいます。このような華やかなイメージのソリストは当然脚光を浴び、これを目指す人口も圧倒的に多いように感じます。

しかし本日取り上げたいのは、ソリストではない「伴奏者」というピアニストについて。良き伴奏者に憧れ、研さんを積んでいる最中の未熟者筆者の独断も交えながらご紹介しようと思います。

「伴奏をする」という専門性

「ピアノを勉強する人達が、なぜもっと伴奏を自分たちの専門としないのか」ということについて、私はしばしば考えさせられる

名伴奏者としてうたわれるピアニスト、シェラルド・ムーアの著書『伴奏者の発言』は、このような冒頭文から始まっています。こちらの本には、名伴奏者である彼の長い音楽生活の体験を通して率直な忠言と告白が暴露されており、私が学生時代に出会って以来、ずっと伴奏をする上でのバイブルとなっている本です。

演奏会のチラシなどを見ると、伴奏者というポジションはあくまで歌手やヴァイオリニストなどのソリストのサブのような扱いで、小さく写真が載っていたり、もしくは下のほうに小さく名前のみが載っているような扱いが一般的です。そのため、伴奏者というのは誰がやっていても変わらない、存在感がないというイメージを持たれがちですが決してそうではないのです。

伴奏はソリスト同様におもしろくてやりがいがあるということ、ソリストと一緒に音楽を作り上げる共同演奏者であるということが、この本には書かれています。

伴奏者に求められること

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伴奏者の仕事は、ソリストから依頼されることが多いです。たとえば、ソリストの大切なリサイタルの伴奏者として依頼される場合、ソリストから見て芸術的な意味で同等かそれ以上の能力が必要です。(頼りない伴奏者に頼みたいと思う奏者はいませんものね…!)

譜面から音楽を理解しつつ、ソリストの呼吸を読み取り、くせや意向に対応していく力が求められます。基本的にはソリストの意向に沿って演奏する柔軟さを求められますが、時に音楽面で意見を伝え、リードしていく力も欠かせません。

また、どのようなアクシデントがあっても落ち着いて対処できる臨機応変さも大切です。(実際のところ、あがり症のソリストも結構多いもので、リハーサルと全然違うことが本番に起こることは珍しくありません)

そして、伴奏者のほうが緊張してピリピリした気配を出してしまうと、ソリストを不安にさせてしまう危険があるので、どんなときも穏やかに平静を装えるスキルも必須です。笑

つまり、音楽的にも人間的にも信頼できる人材が求められているのです。

音楽的に信頼されるために…

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ソリストにも同様に言えることではありますが、特に伴奏者は「聴きながら弾く能力」が重要です。

共演する楽器や声に溶け込む音を、いかにして出せるか、それを聴く耳が大切なのだと思います。背景で色を作るような音だったり、時に刺激的で象徴的な音や、甘い音など、音色を自在にコントロールし、そこにソリストを乗せていく役割があります。そのため、普段ひとりで練習をするときも、理想的な音色を弾き分けられるように、自分の音を聴く耳を持つことが大切になります。

また、譜面を表面的に追うだけではなく、そこから音楽を理解する力も持っていなければなりません。

たとえば「f(フォルテ)をどういうふうに弾くの?」と質問すると、ほとんどの方はまず「強く(大きく)弾く」と答えると思います。この答えは半分は正しいのですが、常に強いばかりとは限りません。

もちろん、金切り声をあげるようなフォルテで音楽が台無しになるのは論外ですが、相手の音をかき消すほどの強さで弾くのも間違いです。作曲家がどのような思いを込めてその記号を書いたのか、譜面から読み取る必要があります。たとえば、音量としては非常に小さいけれど、エネルギーが込められた音を表現してほしいから「フォルテ」と書かれる場合もあるのです。

フォルテと言っても、単なる強弱記号ではなく、表情記号として扱われている場合もあるので、譜面からどのような音で演奏するのか判断し、自分なりの答えを持って演奏します。

このほかに、和声進行や調性感に基づく音楽の方向性を演奏で示したり、フレーズの処理の仕方や楽曲の構成を理解したり…。要素と要素の間をどのようにつないでいくかなども考えつつ多様な視点で音楽を理解し、相手の信頼に応えていく必要があるのです。

目立ちたがり屋さんは不向き?

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さて、ようやく本日のタイトルにたどり着きました。笑

目立ちたがり屋さんは、伴奏者には向かないのでしょうか?

私が伴奏の勉強を始めたばかりのころ、ある先生から「演奏中の動きをオーバーにしないように、動くことで存在感を誇張しないように気をつけなさい」というご指摘をいただいたことがあります。

解釈にもよるかもしれませんが、私はその言葉から「伴奏者とは、あくまでソリストを立てる立場である」ということを学びました。

やはり伴奏者というのは「我こそが」と“誰よりも目立ちたい”という意識ではなく、ソリストを立てつつ音楽を共に作るという意識を常に持つことが一番大切と言えるのではないでしょうか。

 

さて、今回は広い意味で伴奏者に求められることを書きましたが、次回は少し踏み込んで、歌曲やオペラの伴奏者の仕事について詳しくご紹介します。どうぞお楽しみに。