オーケストラ日誌!Day 1 〜シュトゥットガルトより〜

みなさん、お久しぶりです。連載『ヴィオラ奏者のベルリン便り』を書いておりました、あきこです。

渡独してから3年間ずっとベルリンに住んでいましたが、実はこの4月にドイツ南西部にある街、シュトゥットガルトに引っ越し、現在はシュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団にてTutti奏者として働いています。

このたび、新連載「オーケストラ日誌!」を始めることになりました♪  私のオーケストラの活動、演奏会やリハーサルなどの舞台裏をご紹介したいと思っています。

シュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団って?

ドイツの連邦州、バーデン・ヴュルテンベルク州の州都である街、シュトゥットガルト。 “黒い森” と呼ばれるシュヴァルツヴァルトの東に位置し、電車で簡単に南のスイス(2時間半)や西のフランス(パリまで3時間半)に行くことができます。車の街としても知られ、メルセデスベンツやポルシェの本社があることで有名です。

ドイツの「左足」に位置するシュトゥットガルト(引用:Googleマップ)

私たちシュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団は州都シュトゥットガルトの傘下にあるシンフォニー・オーケストラ*です。シュトゥットガルトにはその他に、南西ドイツ放送(SWR)傘下の南西ドイツ放送交響楽団や、バレエで有名な歌劇場があります。

*主に交響曲などが演奏されるシンフォニー・コンサートをおこなうオーケストラのこと。オペラの演奏を専門とするオペラ・オーケストラとその役割をすみ分けている。

本拠地とするコンサートホールは、Liederhalle(リーダーハレ)。シュトゥットガルト唯一の多目的ホールで、夏にはお笑い芸人・キンタロー。さんも出場された、大きな社交ダンスの大会が開かれています。このホールではいつもたくさんのイベントがおこなわれているため、私たちは練習場を別に持っています。

団員は総勢86名。音楽監督には、以前日本の東京フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者だったダン・エッティンガー氏を迎え、普段の演奏会のみならず子供向けのコンサートや室内楽演奏会など年間約 100 公演をおこなっています。

正団員への道のり

4月からこのオーケストラで働き始めましたが、オーディションに受かったのは昨年の10月のことでした。朝から予備審査、第1・第2・第3ラウンドと弾き続け、さんざん待ったのちに首席ヴィオラの方がいらして「これからよろしく」と握手をしてくださったことは、今でもよく覚えています。本当はなるべく早く始めてほしいとのことだったのですが、学業や3月にあったベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団との日本ツアーの関係で、4月からの契約スタートにさせていただいたのでした。

▷参考:ベルリン便り Vol.11 ~オーケストラツアー【第1弾】~

さて、働き始めるといってもいきなり正採用というわけではなく、まずは1年の試用期間があります。この試用期間で、ひとりで舞台で演奏するオーディションでは判断することのできないポイント、たとえば…
・人間性や協調性
・オーケストラの曲がきちんと弾けるか
・これからずっと同僚として一緒にやっていきたいか(重要!)
が、オーケストラの団員によって判断されます。ドイツのオーケストラで試用期間に受かるのは非常に難しいと言われており、ものすごくうまい人でも試用期間に落ちるということは少なくありません。

うちのオーケストラは親切なことに、試用期間開始後半年で1度目の話し合い(グループの意見の元に協議がおこなわれ、問題があれば要改善として本人に後ほど伝えられる)があり、さらにその3カ月後、すなわち9カ月後に2度目の話し合いと投票がおこなわれることになっていました。つまり、受かれば1年かからずに試用期間が終わり、もし試用期間で落ちてしまっても、3カ月間職なしにならずに次の職を探せるという訳です。

そんなわけで、試用期間に対しては大分身構えていたのですが、4月に初めて行ってみるとみなさんとても親切で、「やっと来てくれた!」「あなたが来てくれて本当に嬉しい!」と歓迎してくださり、非常にスムーズにスタートを切ることができました。この9カ月間、経験豊富な方々に揉まれて大変なこともありましたが、助言をあおいだり議論を重ねたりして少しずつなじむように心がけた結果、ヴィオラグループのみなさんにも全面的に支えていただき、無事に団員の3分の2以上の賛成(が合格には必須)をもって試用期間に合格することができました。

2度目の話し合いと投票は、マーラーの交響曲第1番をメインとしたプログラムのリハーサル期間中におこなわれ、最後リハーサル日の休憩時に開票されました。休憩後に「彼女を新しい正式な仲間として迎えます」と発表されたときは非常に嬉しかったですし、リハーサル後やそのあと数日にわたってみなさんが祝福してくださり、本当に感謝の気持ちでいっぱいになりました。

また、開票翌日が演奏会だったのですが、カーテンコール時に花束を受け取られた指揮のニコラス・ミルトン氏が、「試用期間合格おめでとう」と舞台上で私にその花束をくださるというサプライズがありました! 普通指揮者の花束をもらえるのは最前列に座っている人やその日特別なソロを演奏した人なので、2列目にいた、いわゆるその他大勢の私がいただくのは非常に恐縮だったのですが(聴衆のみなさんは何のことかと思われたでしょう)、事情を知っているオーケストラのみなさんが温かく祝福してくださり、非常に思い出深い演奏会になりました。

いただいた花束。いつか枯れてしまっても、この思い出はずっと忘れない大切なものです

今は、少し安堵しながら、延長契約の書面が届くのを首を長くして待っています(笑)


これから定期的に、オーケストラのプログラムや日常・舞台裏をご紹介していきたいと思います。ご意見ご要望がございましたら、COSMUSICA編集部までお寄せください!