演奏家もセルフレコーディング! プロエンジニアが録音のコツを伝授


急に音源を提出しなくてはならなくなった! 自分の演奏を客観的に確認したい!

演奏家の皆さん! このように、プロに頼む時間がないけれどどうしても録音が必要、もしくはそこまでクオリティは求めていないけれど録音はしたいという機会は多いのではないでしょうか。

今はポータブルのレコーダーからスマートフォンに至るまで、本当に手軽にレコーディングができる時代になりました。しかし、録音された音を聞いてみると、楽器のバランスが悪かったり音量が大きすぎる、または小さすぎるという事態に見舞われたことはありませんか?

今回は、ポータブルレコーダーを使って上手に演奏のレコーディングするコツをお伝えします。

まずはレコーディングする楽器を理解する

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ポータブルレコーダーを使って良い音で録音するためには、楽器からどのように音が出ているかを理解することが大事です。

基本的に生楽器は音を飛ばすような工夫がされています。ヴァイオリンやギターのような弦楽器は共振する穴から、管楽器はベルの向いている方向に音が伝達していきます。

これらを把握し、楽器の音が出る方向にレコーダーをセッティングすると、クリアな音で録音できます。レコーダーと楽器の間に障害物があると音がこもったりする原因になるので譜面台などを置く位置に注意しましょう。

どうしても障害物が避けられない場合はレコーダーの位置を高くすると比較的バランスよく録音することができます。レコーダーによってはマイクの指向性がある物もあるのでのちほど紹介します。

複数の種類の楽器を録音する場合は小音楽器はレコーダーの近くに、大音楽器は遠ざけると良いでしょう。

楽器の数が多い時はレコーダーを囲うようにするとバランスが良くなります。

おすすめのレコーダー

さて、ここでいくつかおすすめのお手軽ポータブルレコーダーを紹介します。新たにポータブルレコーダーを購入する予定の方は参考にしてみてください。

ROLAND R-05


Roland ローランド WAVE/MP3ポータブルレコーダー R-05
¥20,740
amazon.co.jp

ステレオマイク内蔵のベーシックなレコーダーです。

マイクの指向性が比較的緩いのでセッティング位置で失敗することは少なそうです。また、SDカードに録音することができるので、パソコンで簡単に音源管理ができ便利です。

日本の会社なので、日本語表記がされているという点でも使いやすいかと思います。

TASCAM DR-22WL


TASCAM リニアPCMレコーダー Wi-Fi接続対応 DR-22WL
¥15,800
amazon.co.jp

こちらもステレオマイク内蔵のレコーダーです。

マイクがX-Y方式という方法を取っており、実際の聴感上に近いリアルな録音が可能です。

基本的な機能はR-05とほとんど変わらないですがこちらはWi-Fi機能を備えています。スマートフォンから本体へアクセスし音源データを吸い出すことが可能です。パソコンいらずですぐに共有できるので便利ですね。

ZOOM H1


ZOOM ズーム リニアPCM/ICハンディレコーダー マットブラック H1/MB
¥9,234
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同じくX-Y方式のステレオマイク内蔵のベーシックなレコーダーです。

紹介している中では一番安価な製品ですが、余計な機能が無く使いやすい物かと思います。

レコーダーにお金を掛けたくない場合や迷った時の入門機におすすめです。小型で持ち運びにも向いています。

会場の大きさによる違い

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自宅やリハーサルスタジオなどの比較的狭い場所は、壁や天井に音が反射し音量が大きく聞こえます。逆にライブハウスやコンサートホールなどは天井や壁の面積が広い分音が拡散し少し小さく聞こえがちです。

環境によって録音されるレベルも変わるので各環境に合わせて調節するのが望ましいです。

狭い場所での録音

狭い場所で、楽器の数が1~2個の場合は、楽器から60cm~1m程の間隔をあけてレコーダーを設置します。こうすることで、部屋の反射の影響を最小限まで少なくし、生楽器の音を上手に録音することができます。

近すぎると特定の音程だけが大小してしまったり、楽器の余計なノイズを拾ってしまったりする原因になるので程良く距離をあけてください。

広い場所での録音

大きい会場の場合は、音源からレコーダーを遠ざけると会場の反射音が大きくなり、会場の残響音が原因で音がボケてしまうことがあるので注意が必要です。

例えばコンサートホールのような会場で録音する場合は、会場のセンターの前方で録音するとバランスが良いでしょう。

やはり障害物があると音がこもる原因になりますので、可能なら身長より高い位置に設置するのがコツです。

野外での録音

野外で録音する場合はレコーダーにウインドスクリーン(マイクに覆いかぶせるスポンジ)を着けると、風切音が少なく録音できます。

ウインドスクリーンが無い場合は、タオルを2、3重にしてマイクに巻くと近い効果が得られます。

レコーダーの音量設定方法

多くのポータブルレコーダーには音量メーターが備え付けてあります。録音する音量が表示されているメーターのピークより振り切ってしまうと、音が歪んでしまう原因になるので慎重に設定したいところです。

音量を決めるコツですが、曲の一番音量の大きい部分でメーターが振り切らないくらい(メーターの3/4ほど)に調節しましょう。メーターによってはdB表記がされている場合がありますがその場合は-6dB辺りにピークがくるようにすると良いです。

演奏者が録音を兼任する場合は、演奏しながらメーターを確認することはできないかもしれません。その場合は一度仮で録音して、何度か確認してみてください。少々面倒かもしれませんがここが一番大事なところです。

!オートゲインコントロールに注意!

機器によっては自動で音量を決める機能(オートゲインコントロール/AGC)がある物もありますが、あまりおすすめしません。

この機能は、突然の大きな音や小さな音に合わせてリアルタイムに自動で音量を定め、音が歪むのを防いでくれます。しかし、同時に音楽的な音量バランスも崩れてしまいます。クラシック音楽などはピアノ、フォルテの音量差を大事にするので、AGCのような機能は不向きかと思います。

レコーダーの種類とその特性

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最後に、「もっと詳しく知りたい!」という方のために、ポータブルレコーダーの種類とそれぞれの特徴を少し解説いたします。

音楽向けレコーダー

多くの音楽向けレコーダーはステレオ録音ができるタイプの物が主流です。ステレオ録音とは、正面から来た音のみを拾う「単一指向性マイク」を2本使い、左右の音の広がりをリアルに録音するというもの。

複数楽器を録音する場合は、実際に並んだ位置のバランスがそのまま録音されます。レコーダー自体に単一指向性マイクが内蔵されているので、レコーダーの向きに注意して録音しましょう。

ICレコーダー

ICレコーダーなどは、主に声を録音することを目的として作られているため、モノラル録音の物が多いです。

モノラル録音のものは、さきほどのステレオ録音と違い、内蔵されているマイクは1本のみです。またその指向性も、360°どこからでも音が録れる「無指向性」という特徴があるので、音楽を録音するには少々不向きです。

ハイエンドレコーダー

値段の高いレコーダーにはハイレゾ録音機能(手っ取り早くいうと「凄く良い音で録れる機能」)やマルチトラック録音(手っ取り早くいうと「一度録音した物にダビングしたり、外部マイクを繋いでマイクを増やして録音する機能」)を備えた物があります。

初めてポータブルレコーダーを使う方は、機能が多すぎるとかえって使いづらいのでこういったものはあまりおすすめできません。

iPhoneやAndroidなどのスマートフォンの録音機能

一番お手軽に録音出来るツールかと思います。

標準アプリの録音はAGCが掛かってしまうので、アプリストアで録音アプリを探してみてください。

残念ながらスマートフォンの内蔵マイクはモノラル仕様ですので音の広がりは録れません

iOS用にはいくつか外部ステレオマイクを使って録音できる製品が出ています。データの容量やバッテリーを消費してしまうので長時間の録音には向いていませんが、少しの時間でサクッとレコーディングしたい場合は便利な製品です。

 

以上、ポータブルレコーダーを使った失敗しないセルフレコーディングのコツでした。

せっかく録音をするならば、少しでも良い状態で録りたい…そんな演奏家のみなさまの参考になれば幸いです。

とはいえ、本格的に録音する必要があるとなればやはりプロに依頼するのが確実。時間と予算に余裕がある場合は、ぜひご検討ください。

 


isoda

監修:磯田和宏
PA/レコーディングエンジニア
1987年2月14日生まれ。都内の専門学校卒業後、様々な著名アーティストのツアーに参加。2013年にサウンドエンジニアチーム「Astroglia」を結成。音響エンジニアとしては珍しくPAとレコーディングの両面で活躍し、ジャズからロックまで幅広いジャンルを手掛けている。


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