予期せぬハプニングの連鎖! 声楽家 遠藤采が体験した恐怖の本番エピソード

こんにちは! ソプラノ歌手の遠藤采です。

念入りに準備を重ねて迎える本番…ですが、時には予想だにしないハプニングが起きることもあります。今日は、とある日曜日のわたしのびっくりエピソードをご紹介したいと思います。

気楽な読み物としてお楽しみくださいませ。

それはレストランでディナーコンサートをした日の出来事。

そのレストランは初めて演奏する場所だったのですが、照明は暗めでムードがあり、小さな川が流れていてせせらぎの音が聞こえる…そんなおしゃれなレストランでした。

ハプニングの連鎖は、本当にささいなことで幕を開けました。

本番前、化粧直しをしていると、演奏時によく身につけているお気に入りのネックレスのパールが突然はずれたのです。

演奏時以外あまりつけませんし、格別お安い品でもなかったので、今思えばこれも不思議な話ですが……、そのときは深く気にとめず、「今日はネックレスなしで演奏しよう!」と気持ちを切り替えました。

その後、店員さんに演奏ステージの案内をしてもらいました。やはり初めての会場ですから、下見は重要です。

その日ご一緒したピアニストSさんと案内してもらったのですが、ふと気がつくとピアニストが見当たりません。「お手洗いに行ったのかな……? まあいいか! あとで教えてもらったことを伝えてあげよう!」なんて思いながら説明を受けていると……

バシャン!! バシャン!!! バシャン!!!!

後ろから水の音がします……。

驚いて振り返ると、遅れて歩いてきたSさんが、店内を流れるきれいな川を豪快に渡っているではありませんか……!!!

川には橋がかかっていて、本来はそこを渡るはずなのですが、どうやらそのときは緊張のあまり足元に意識が及ばずなぜか川を渡ってしまったとのこと…(何故一歩目で川に入ったことに気付かなかったの?と突っ込むのは我慢……)

しかし気持ちはわかります。
演奏前は平常心でいられません。
平常心でいたいところですが、どんな場所でも、どんな曲を演奏するにしても緊張するものなのです。

演奏するまでに一時間ほど休憩があったので、お店にお借りしたタオルで拭いて、乾かす作業……。

平常心、平常心……。
「大丈夫!かわいたよ!(^^)」
と笑顔で言うピアニスト。本当に乾いているのかわからないし、ショックで泣きたい気持ちになっているに違いありません。私だったら泣いています。
しかし無情にも演奏する時間になってしまいました…。

いよいよ本番。

私も普段、レストランやカフェ演奏をする際によく使用するドレスを着ました。着慣れてるので心配はありません。気合いを入れ直し、ステージに向かいました。

レストランからのリクエストは、オペラやミュージカルなどの有名な曲を演奏してほしい、とのこと。そこで、『乾杯の歌』や、『私のお父さん』、『サウンド・オブ・ミュージック』やディズニー音楽など、クラシックやミュージカルに馴染みのない方にも楽しんでいただけるようなものを選曲しました。

順調にディナーコンサートは進んでいきます。

しかし事件は再び起きたのです……。

それは『サウンド・オブ・ミュージック』を歌おうとマイクを手に取ったときでした。

リハーサル時に確認したはずの、マイクのボリュームがものすごく小さくなっている……!(どうやらスタッフの方がマイクを使わないと思ったようで、ボリュームが落とされていました)

マイクの音量はレストランの奥にある厨房で変えることができます。一時は焦ったものの、自分で音量を調整しにいくしかないととっさに判断。ピアニストに耳打ちし、アドリブで間奏を弾いてもらい、奥にそそくさと移動します。

あぁ、すばらしいピアニストでよかったな、なんて思いながら音量を変えようとしたとき…

わたしの演奏会には必ず来てくれる、ちょっと個性の強い、一部では名物おばあちゃんと呼ばれている、わたしの祖母が後ろからついてきているではありませんか!! マイクの音量が入っていないことを心配して、私の後を追って走ってきたそうです。

しかしここはレストランの厨房。

ドリンクや料理を作ってる人がいれば、注文されたメニューを確認している人もいます。そんな中で、祖母が大声でこういったのです。

「さいちゃん!!!! マイク入ってないよ!!!!!!!! マイク!!!!!」

それは厨房中に響き渡りました……。
目を丸くする従業員さん達……。
おばあちゃん、さすが声楽家を目指していただけあって、声量すごいね……。
じゃなかった、従業員のみなさま驚かせてしまい申し訳ありません……。

祖母に悪気はありません。孫の一大事に慌て、助けてくれようとしたのです。

ありがとうおばあちゃん……は、恥ずかしくなんかないよ……。
平常心、平常心……。

さぁ、気を取り直して、オペラ椿姫から、有名な『乾杯の歌』を歌います!
これは何回も歌ってるし、大丈夫大丈夫!

声量たっぷりで歌い出したのでお客さんの注目も集まり、

「ああ気持ちいいなあ! 何もかも忘れて、思いっきり楽しんで歌おう…!」

そんなことを思って歌いました(お客さんの反応で演奏家の殆どはテンションが左右されると思います)。テンションは最高潮へ!! 思いっきり息を吸って、フォルテを歌うぞー!!

そう意気込んだときでした。

声楽家は、腹式呼吸で歌います。
息を吸うと、身体が膨らみます。
そのとき着ていたドレスは、安静時でピッタリ(むしろキツいくらい)で調節していました。
テンションがあがり、思いっきり息を吸ったその時。

パッ!!!

…たしか、そんな軽い音が聞こえました。

しかし演奏中でしたし、何の音かはわかりません。
「なんか息吸いやすいな~~? 絶好調?」
そんな悠長なことを考えていました。

その後曲間で舞台裏に行き、ふとドレスに目をやると……

もうみなさんお分かりのことでしょう。そう、ドレスのチャックが壊れていました。

壊れたチャック

一気にふき出す冷や汗。薄暗いレストランとはいえ、下着見えてる……!!!

どうしよう!? 真っ青になりましたが、とにかくピアニストには急遽ソロでつないでもらいました(涙…)

店長さんを呼ぶと安全ピンとホッチキスを持ってきてくれました。

「とりあえず止まるもの持ってきたヨー。今日いろいろあるネー。大丈夫ダヨー! 楽しいネー!」

涙はもうすぐそこに来ていましたが、 イケメン外国人店長に優しい言葉をかけてもらい、なんとか持ちこたえ、無事? その後は事件もなくディナーコンサートを終了することができました。

お客さんの温かな拍手や笑顔、お店の方の優しいフォロー、助けてくれた最強ピアニスト、(そしておばあちゃん)に支えられた夜でした。

みなさまありがとうございました……m(__)m

声楽を始めて8年、いままでハプニングというハプニングがなかったこともあり、大変な一日でした。

振り返りと反省点

この日を振り返り反省点をあげるならば、

・コンサート時は必ず安全ピン、ソーイングセットを持ち歩くべき
・アクセサリーの予備を持っていくべき
・呼吸をしたときに苦しくないよう余裕をもってファスナーをしめるべき(最近体重が増えたのに前のきつさのままで演奏してしまいました)

といったところでしょうか…。この話を演奏家の先輩に話したところ、

・チャックがプラスチック製の場合はすぐ壊れることを覚悟した方が良い!!(温度の変化や、衝撃に弱くよく壊れるとのこと)
・よって、お気に入りのドレスは、鉄製のチャックに付け替えてもらうと壊れるリスクを軽減できる

というアドバイスをいただきました…!

今となっては一応(?)笑い話となりましたが、本当にこんなことありえない! というくらいトラブル続きの日でした…。今回のことがトラウマになり、次は絶対にチャックのないドレスを買うと決意した遠藤なのでした(笑)

ですがなにより学びになったのは、共演者や周りの人の助けがあってこそ、最高の演奏ができるのだという再確認ができたこと。感謝を決して忘れないようにして、一回一回の本番を大切に重ねていきたいと決意を新たにしました。

長文になりましたが、お読みいただきありがとうございました。

 

遠藤采

ABOUTこの記事をかいた人

遠藤采

東京都立芸術高等学校卒業。東京芸術大学音楽学部ソプラノ専攻卒業。Game Symphony Japan東京でマリア役(FF6)として東京室内管弦楽団と共演。俳優やタレント等の音楽指導を行う。映画「少女」ではレコーディングに参加している。趣味はテレビゲーム。愛猫家。