進め! ヴァイオリンおけいこ道 第14回「結果と向き合う」


こんにちは! 今週のおけいこ道の時間がやってきました。ヴァイオリン弾きの、卑弥呼こと原田真帆です。

今週のテーマは「結果を受け入れる」こと。人生、いい結果ばかりとはいきませんが、なんとか生きていけるのは「結果を受け入れる」から。しかし、どうしたらいいんでしょうね? オトナの皆さんは、もしお子さんが落ち込んでいたら、どのように励ましますか?

なぜエリートは謙虚なのか

コンクールや受験など、審査を受けに行くからには、うまくいかないこともあるわけで。幼いうちから「私立受験」や「音楽コンクール」などに挑戦するエリートたちは、人より早く「挫折感」を味わう羽目になります。これが、一流の人たちが謙虚なゆえんのひとつです。

たとえば、「どちらの大学の方?」と聞いたとき、東大生と藝大生は「一応、東大です」「一応、藝大です」と答える人が多いんだとか。これは早くからレベルの高い世界を見てしまっているがゆえ、自分の上にいる人の存在を知っていることから出てくる言葉です。

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彼らが高い学歴を手にした理由。それは何度でも絶望という地獄から生き返って現世に再挑戦してきたから。ゾンビになってでも生還して、醜くても戦います。自分よりすごい人を目の当たりにして、戦わずして逃げるのは、絶望という沼を見ないための予防策。そうすれば傷は最小限で済みます。

反対に、その沼を見てきた人は、かなりのけがを負っているはず。それでも再び傷つきに行くのはある意味マゾスティックな話でありますが、大きなけががあるからこそ、大きな幸せが感じられるのだと、彼らは信じてやみません。

彼らは小さな幸せでは満足できないほど目標もプライドも高く、また欲張りでもあるのです。わたしも欲張りな人間ですが、たった一度の人生です。自分に納得して過ごしたいので、一度乗ってしまったこのリングからしばらく降りるつもりはありません。つまり、まだまだ傷ついていくのです。

どうやって「手当て」する?

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というわけで、体当たり人生を過ごしていると、傷の処置方法は、自分なりのものができてくるわけです。もし機会があったら、先生や先輩の「手当て」はどういったものか、聞いてみると良いと思います。

わたしはなかなか病み倒すタイプなのであまり良い見本にはなりませんが……、人に落ち込んでいる姿を見せるのだけは嫌なので(プライド高いな)、コンクールに落ちたあとだって、学校に行けばいつものキャラ通り明るく振る舞いますし、何なら家族にも隠します。が、あまりにあっけらかんとすると、母から「反省してないの!?」とお叱りが飛んでくるので、さじ加減は難しいところです。

しかしこの「いつも通り振る舞う」テクニックが意外と重要。音楽学校に進学した日には、大勢が同じコンクールを受けたりするわけですから、受かった落ちたでテンションを変えていると日常生活にもコミュニティの平和にも支障をきたします。

友人の結果は、自分の感情とは切り離し、「事実」として認識。たとえ、万が一、仮に、本音では「なんでオマエが選ばれるんだよッ」と思ったとしても、それは「叫びの壺」にでも吐いておいてください。考えるべきはそこではありません

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悪い結果も良い結果も

では良い結果が出れば、それで満足ですか? それがゴールでしょうか。ゴールということは「終わり」ですね。

良い結果が得られようとも、わたしたちの挑んでいる「音楽」という絶対的な存在は、決して妥協してくれることはありません。「終わり」なんて、宇宙の果てと同じくらい遠くにあることでしょう。そう、そのとき良い結果で終わろうが、悪い結果で終わろうが、人生は変わらず続いているのです。

これは良い結果を得たときほど、身に染みてくる真理でもあります。「あぁ今回得た結果に恥じぬよう、もっとがんばらなくてはいけない」という心境です。

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もし音楽が生きがいになっているのだとしたら、挫折したところで、そう簡単に自分から切りはなせないでしょう。だったら気が済むまで共に歩むしかありません

人生さまざまですから、中には早いうちに気が済むというか、これまでと違う形で音楽とお付き合いする気持ちになる人もいます。もちろん、それはそれで「アリ」な決断。「音楽をやらなきゃいけない」のではなく、「自分に納得できるか」「より自分が幸せになれる道は何か」という視点で、挫折という沼にいる自分の存在に向き合って結論を出すまでの過程が、その人なりの「手当て」なのです。

わたしもたくさんの「絶望沼」経験がありますが、そのたびに「わたしはヴァイオリンを弾き、日々練習によって己を磨き、ステージに出ることが幸せなのだ」という結論にいたってきました。

結局いつも同じ結論だったけれど、そこにたどり着くまでのプロセスはいろいろありました。でも巡り巡って同じ結論に出会ったときはいつも新鮮な気持ちですし、そうして弾く音階はとても体に染みます(ま、そこに至るまでに毎度、メンター的な存在の人に散々話し倒したりしてご迷惑おかけするんですけれど)。

とりあえず、今日も空は青い

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挫折を知って、絶望からはいあがるプロセスが、ポケモントレーナーふうに言えば“我がXPを高める”ことになるのでしょう。

某タレントさんのキャッチフレーズ「努力は必ず報われる」が賛否両論を巻き起こしてから久しいですけれど、実際問題「諦めなければ必ず希望通りになるか」といえば、それは保証のない話。ただ、希望を叶えた人は必ず、諦めずに粘っているんですよね。

「諦めない」は必勝の魔法ではなく、最低限のわきまえなのかな、と思います。


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ABOUTこの記事をかいた人

原田 真帆

栃木県出身。3歳からヴァイオリンを始める。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校・同大学器楽科卒業、同声会賞を受賞。英国王立音楽院修士課程2年在学中。第12回大阪国際音楽コンクール弦楽器部門Age-H第1位。第10回現代音楽演奏コンクール“競楽X”審査委員特別奨励賞。佐々木美子、山﨑貴子、澤和樹、ジェラール・プーレ、小林美恵、ジャック・リーベックの各氏に師事。弦楽器情報サイト「アッコルド」、日本現代音楽協会HPにてコラムを連載。