転科経験者に聞く。転科して良かったこと、悪かったこと


音楽を学ぶ方の中には、少数ですが「転科」を検討する方もいますよね。

たとえば、作曲科から指揮科、教育学部からピアノ科など…。在学中の転科だけでなく、中学から高校、もしくは高校から大学へ進学するタイミングで専攻を変える人もいます。

今回は、実際に専攻を変えた3人の方に、転科で大変だった点、良かった点などを伺いました💡

ちなみに、中にはなかなかヘビーなものもありますが、匿名での取材ということもあり掲載することにしたという点を書き添えておきます。

M.Kさん(ピアノ専攻→声楽専攻)

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転科のきっかけ

「幼い頃からずっとピアノをやっていたので、音楽家の中学受験もピアノ専攻で受けました。ですが、入学後に次々やってくる試験や課題に追われ、精神や生活リズムが崩れていく中で、最初に感じていた“ピアノが好き”という気持ちを忘れかけていました。

そんなとき、合唱部に入って、純粋に歌うことを『楽しい!』と感じたことが自分の中で大きく、自分の音楽との向き合い方を見直すキッカケになりました。また、個人レッスンでついた恩師との出会いが、声楽科への転科という声楽を深く学ぶ道へ導いてくれました」

専攻を変えて大変だったこと

「やっぱり、長くピアノをやっていたので、それをやめるということに関してはかなり悩みました。家族とも話し合いを重ねて、お世話になったピアノの先生にも相談して…。色々な方に相談し、たくさん悩む中で、『自分で決めなきゃいけないんだ』という現実がのしかかりましたね。

転科を決意したあと、中学卒業前の演奏会のことは今でも鮮明に覚えています。ピアノ科として最後の演奏だと思うと、悲しみとともに気合が入り、しっかりと準備を重ねました。転科を決意したことで、苦しさだけではなくピアノに対する愛おしさやピアノが好きな気持ちを思い出し、最後にはピアノに本気で取り組むことができたのだと思うと感慨深いです」

専攻を変えて良かったこと

「誤解を恐れずに言うと、歌はピアノと違い単旋律なので譜読みが比較的早くでき、始めた当初からいろいろな曲を歌えるようになったことが嬉しかったのだと思います(振り返ってみると、歌えているとは言えないレベルに違いないのですが笑)。

それから、自分でピアノパートを弾くことができるので、曲調をすぐに把握できたり、ピアノから曲を分析できることが強みになっているのではないかと思っています。

今は毎日歌を勉強することができて、本当に幸せです!」

I.Tさん(オーボエ専攻→音楽学専攻)

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転科のきっかけ

「中学からオーボエを始め、音楽高校に進みました。ですが、専門的な環境の中で、プロとして活躍されている先生や、プロを目指す同級生たちを間近で見ているうちに、自分が人生をかけてこの道を極めたいのかわからなくなって。練習も義務感でやるという感じで、楽しいと思えなくなっていました。

大きなきっかけになったのは、高校2年生のときに研修旅行でドイツに行ったことです。向こうではそこかしこで演奏が始まったり、演奏会に足を運ぶ人も多かったりと、町中に音楽が根づいていて、日本とはクラシック音楽に関する土壌が全然違うんだと身にしみて感じました。そのとき、『日本でクラシック音楽を学ぶには限界がある、でも自分は海外に出て行くほど今の道を極めたいのか?』って思ったんです」

専攻を変えて大変だったこと

「高校が音楽科だったので、そもそも受験できる大学の選択肢が狭くて(笑)。ただ、音楽から完全に離れるのはいやだなという考えもあって、最終的には、学問的に音楽を学ぶ学科に進学を決めました」

専攻を変えて良かったこと

「もしあのとき、無理してオーボエ専攻で進学していたら、きっと大学2年生くらいで齟齬(そご)が生じて自分がだめになってたと思います。今は会社員なんですが、この春から地域のアマチュアの吹奏楽団に入団したんです。時間はかかったけれど、今は心からオーボエを楽しめるようになって、それが本当に嬉しいです」

R.Oさん(オーボエ専攻→ハープ専攻)

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転科のきっかけ

「オーボエは、中学の吹奏楽をきっかけに始めました。あるコンクールでソロを担当したとき、それを聞いた審査員の先生からお声をかけていただき、親元を離れて福岡の音楽高校に特待生として入学したんです。

ですが主科の先生とうまが合わず…リードを折られたり、いじめまがいのことをされたのですが、誰にも相談することができず思いつめる日々でした。オーボエを吹くことはおろか、食事すら困難な状態にまでなって…。ある日爆発して、荷物をまとめて実家に逃げ帰りました。

翌朝、担任の先生が迎えにきてくれて、『どうにかやっていく方法を一緒に考えよう』と言ってくださり、そこで転科を考え始めました。なんの楽器をやろうと考えたときに、ハープだったら自分の楽器運べるし、ソロもできるし伴奏もできる点がいいなと思ったんです。それでオーボエを専攻したまま一年間、外の先生につき、その後転科に踏み切りました」

専攻を変えてよかったこと

「あのままオーボエを続けていたら今はなかったと思うと、変えてよかったと思います。本当に、先生次第で人間って変わるんだなと思いました。今は演奏会やブライダル、お葬式で演奏するほか、30人以上の生徒さんにレッスンをさせていただいています。好きなことを仕事にできて、幸せです」


転科を決める方は、その決断の裏にさまざまな物語を抱えているもの。けれど、3人とも口を揃えて「今とても幸せ」と語ってくれたのが印象的でした。

もし今転科を検討している方がいらっしゃったら、後悔のないよう、最後までしっかり考え抜いてほしいと感じました。


ABOUTこの記事をかいた人

ノリコ・ニョキニョキ

COSMUSICA編集長。1989年イギリス生まれ。東邦大学医学部医学科中途退学、東京芸術大学音楽学部音楽環境創造科卒。週末を楽しみに日々ライティング業に勤しむ普通のOL。2016年6月20日にCOSMUSICA立ち上げ。ハープ修行中。