現代音楽”ちょい聴き”のススメ! ピアノの美しい旋律に隠されたカラクリとは?


こんにちは! 新人ライターであり打楽器奏者のyuccaです。普段は現代音楽を中心に勉強・演奏しており、今は留学準備に追われる身です。

さて、みなさん、「現代音楽」を聴いたことがありますか?

小難しくて、なかなか馴染みにくい現代音楽。クラシック音楽を日ごろから楽しんでいる人でも、積極的に「現代音楽」を楽しみにいくことはあまりないようです。

かく言う私もそうなんですけど。

打楽器奏者と現代音楽

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私は打楽器を演奏しております。実は、打楽器奏者と現代音楽は切っても切り離せないものになりつつあるんです。なぜなら、打楽器奏者がソロ曲(独奏曲)を演奏しようと思ったら、その選択肢がほとんど現代音楽しかないから。

たとえば、オーケストラの打楽器奏者としてベートーベンを演奏することはできても、ベートーベンは打楽器のソロ曲を書いていません。マリンバという鍵盤打楽器でバッハを演奏することはあっても、バッハはマリンバのための曲を書いていませんのであくまでカバーです。

音楽史的に見ても、打楽器オリジナルのソロ作品というのはまだまだ新しく、現代音楽に関わらざるを得ないんですね。今の時代の音大打楽器科に入学しまった時点で、現代音楽を避けて卒業した人を見たことがないと言っても過言ではありません。

…という経緯がありまして、否応なしに現代音楽に触れてしまった私。
結論から言うと、結構面白いって思ってしまった。

現代音楽ってつまりなんのこと?

いやー、面白いんですよ、現代音楽。

難しい理論とかがわからなくても、新しい音、綺麗な音が聞こえる作品がいっぱいあるし、たまーに楽器じゃない、枯葉とか、ビニール袋を、とても真面目に演奏させられるし…。

ときたま、えっこれ音楽って言っていいの? と身も蓋もない疑問すら浮かぶ。

とにかく現代音楽は幅広い。現代音楽って呼べる音楽ジャンルの範囲が広いんです。きれいに聞こえるピアノ曲も現代音楽、もはや楽器じゃないものを演奏するけど現代音楽、いやいや、楽器すら演奏しないけど現代音楽ということもある…。

「えっ、現代音楽って…なんなんだ?」と思いを抱かれるのも当然ですね。

実は「現代音楽」という言葉は括りが大きすぎるのです。かなりざっくりと説明してしまうと、

・20世紀頃から生まれた音楽
・調性、リズム、形式などの、いわゆるクラシック音楽の伝統的な決まりごとから逸脱している

の、二つのポイントで判断して頂けるかと思います。つまりは、19世紀のクラシック音楽に対して、ちょっと過激なほど挑みにいってる音楽なんですね。

実際に現代曲を聞いてみよう

さてさて、説明ばかりもなんなので、ちょっと曲をご紹介いたします。

現代音楽へのはじめの一歩ですしね。あまりゲテモノっぽい曲ではなく、聴きやすいものを“ちょい聴き”してみましょう。

というわけで、今日は二重奏の現代曲を2曲ご紹介したいと思います。

アルヴォ・ペルト 鏡の中の鏡
Arvo Pärt – Spiegel im Spiegel

とってもシンプルで、穏やかな音楽ですね。ピアノの澄んだ響きのする分散和音と、のびやかなヴァイオリンのメロディーが心地良い曲です。

この曲にはちょっとした仕組みがあります。ヴァイオリンの音に注目してみてください。

ソラー    ♭シラー
ファソラー  ド♭シラー
ソファミラー  ♭シドレラー
レミファソラー  ミレドシラー …

と、音が続いているのですが、規則性がちょっと見えてきませんか? 規則性が見つけやすくなるように、ドイツ音名に書き直してみます。

GA BA
FGA CBA
GFEA BCDA
DEFGA EDCBA

一つ目は、音の個数です。2音が2回、3音が2回、4音が2回、5音が2回…と、ひとつずつ音が増えながら繰り返されているのです。

二つ目は、ラ(A)で終わることです。必ずメロディーのフレーズの最後が、ラの音で終わっています。

三つ目は、メロディーが対称的なことです。ピアノでこのメロディーを弾いていただくとわかりやすいのですが、2回のフレーズで1セット、必ず先に出てきたメロディーに対して対称的な動きになっています。まさにタイトルにある、鏡のようですね。

さて、これを現代音楽と一言で言いきって終わってしまうと、なんだか壮大な誤解を与えてしまう罪悪感が沸く。

ですので、ちゃんと現代音楽らしい曲もご紹介したいと思います…。やっぱり現代音楽って言われたら、こんな曲をイメージするのかな?

スティーブ・ライヒ ピアノフェイズ
Steve Reich – Piano Phase

いわゆる、「ミニマルミュージック」というジャンルです。

聴いて分かる通り、メロディーらしいメロディーも、ハーモニーもありません。クラシック音楽のような感情に訴えかけたりする音楽ではなく、知的好奇心が揺さぶられる音楽ですね!

この曲は、2台のピアノでふたりの奏者が同じフレーズを弾いており、そのままのスピードでフレーズを弾き続ける奏者と、わずかにスピードを速めて弾く奏者に分かれることで、1音ずつズレが生じています。

仕組みとしては、

同じ音で重なる-ずれていく-1音ずれて重なる-さらにずれていく…

という動きを、延々と繰り返しているだけです。この「ずれていく段階」を「フェイズ」と呼びます。たったのこれだけなのですが、かなりの緊張感がありますね。

聴く方もズレを聴きとってやろうと必死になってしまうのですが、奏者はもっと必死です。演奏したことがあるのですが、いとも簡単に相手のスピードにつられます。そして気を抜くと一瞬で「フェイズ」が終わってしまうのです…、それこそが聴かせどころなのに!

現代音楽は、まずちょい聴きしてみよう

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なんだか規則性が見つかると、現代音楽も受け入れやすくなりませんか?

現代音楽以前のクラシック音楽は、たとえ細かい作曲原理や、形式を知らずとも、ある一定の型を感じることができます。つまりは、起承転結がわりとわかりやすいのです。

しかし、現代音楽はなにがなんだかわからないまま聴くことも多く、「理解出来なかったー!」という気持ちだけが残ったまま、一瞬で音楽が終わってしまうことも多いかと思います…。

でも、やっぱりそれじゃつまんないし、もったいない! せっかくならおもしろく聴きたいし、仕組みがわかるとさらに楽しい!

なので、わかりやすい現代音楽から聴き始めて、さらに気になったらコアなものに進むことをおススメします。まずは、現代音楽を「ちょい聴き」してみましょう♪

 

これからも、現代音楽をちょっとずつご紹介していけたらなと思います。

気になる現代音楽などありましたら、編集部宛てにご連絡下さい。私が知らない現代音楽でも、しっかり調べて記事にしたいと思います! お楽しみに♪


ABOUTこの記事をかいた人

yucca

小学4年生のとき入った金管バンド部で、「きみには絶対音感があるから、移調楽器は出来ないと思う」という顧問の計らいにより打楽器を始める。国立音楽大学打楽器専攻卒業。